産業廃棄物講座
注)法とは:廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)
法第2条において、廃棄物が定義されています。
法第2条
「この法律において「廃棄物」とは、ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であつて、固形状又は液状のもの(放射性物質及びこれによつて汚染された物を除く。)をいう。」
法第2条第4項
「この法律において「産業廃棄物」とは、次に掲げる廃棄物をいう。」
事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類、その他政令で定める廃棄物
政令第2条
- 紙くず、木くず、繊維くず
- 動物又は植物に係る固形状の不要物
- 食鳥に係る固形状不要物、ゴムくず、金属くず、ガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くず、鉱さい
- コンクリートの破片その他これに類する不要物、動物のふん尿、動物の死体
- ばいじん、処分するために処理したもの等
具体的に例示されている。
2.廃棄物該当性の判断基準と「おから事件」及び「木くず判決」
- しかしながら、前項に示されている個々の定義だけでは、何が法に定める廃棄物に当たるのか不明瞭ですので、国において、「廃棄物の該当性」の5つの判断基準を定めています。
①物の性状
利用用途に要求される品質を満足し、かつ飛散、流出、悪臭の発生等の生活環境保全上の支障が発生するおそれのないものであること。②排出の状況
排出が需要に沿った計画的なものであり、排出前や排出時に適切な保管や品質管理がなされていること。③通常の取り扱い形態
製品としての市場が形成されており、廃棄物として処理されている事例が通常は認められないこと。④取引価値の有無
占有者と取引の相手方との間で有償譲渡がなされており、なおかつ客観的に見て当該取引に経済的合理性があること。⑤占有者の意思
客観的要素から社会通念上合理的に認定し得る占有者の意思として、適切に利用し若しくは他人に有償譲渡する意思が認められること、又は放置若しくは処分の意思がみとめられないこと。 - おから事件及び木くず判決
廃棄物該当性に関し、争われた有名な2つの事件があります。
(おから事件)
平成11年(1999年)、豆腐製造業者が排出したおからが産業廃棄物に当たるかどうか争われた事案において最高裁判所が以下の通り、判断を示しました。「肥料を作るとして、豆腐の製造業者からおからを、お金をもらって引き取っていた業者が、これを多量に放置していた」事件ですが、最高裁判所は、処理費用が支払われていたことや、一般的におからは有効利用されることが少ない市場性を考慮し、「その物の性状、排出の状況、通常の取り扱い形態、取引価値の有無、事業者の意思などを総合的に勘案し、「おから」は廃棄物に当たると判断いたしました。
(木くず判決)
平成17年(2005年)、産業廃棄物として受け入れた木くずをチップ化している業者が、無許可営業で起訴されたものですが、有効利用されている状況等から無罪判決となりました。
2つの事件は、
①「廃棄物」かどうかの判断は、“総合判断説“によるものであること。
②再生利用されているかの判断は、一連の処理の流れの中で価値や利益を生じているかを総合的に判断すべきものであること。
以上、2つの基準をもとに判断されています。
3.欠格要件
産業廃棄物処理業(収集運搬業、処分業)の許可は、欠格要件に該当すると不許可や許可取り消しの対象となります。
- 「禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から五年を経過しない者」について
Q:懲役6か月執行猶予1年の判決の場合、「・・その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から・・」とはいつのことでしょうか?
A:判決日から1年を経過した日となります。(その翌日から欠格要件に該当せず、許可申請ができます。
(説明)
「刑の執行を受けることがなくなった」とは、刑の時効完成、刑期満了、恩赦の一種としての刑の執行免除など刑の執行の免除を受けた場合をいいます。また、刑の執行猶予の場合、猶予期間を経過した者については、刑の執行が免除されるのではなく、有罪の言渡しの効力そのものが消滅します。 - 「株主が欠格要件に該当した場合」について
Q:株主が欠格要件に該当した場合、自動的に許可取り消しとなりますか?
A:産業廃棄物処理業の許可申請書には、5%以上の株主を記載するよう定められていますが、法第7条第5項第4号に規定する欠格要件には株主が対象とされていません。
一法、国の通知(行政処分の指針について:環循規発第 2104141 号 令和3年4月14日)において、株主は、取締役等と同等以上の支配力がある場合に限り、欠格要件の対象とされています。
従って、株主が欠格要件に該当することを理由に取消処分をする場合、聴聞の手続きが必要になります。
なお、この支配力とは、自然人に限られ、法人株主は除外されています。
4.一般廃棄物と産業廃棄物
産業廃棄物誕生の経緯
日本は昭和30年代後半(1960年~)高度経済成長時期を迎え、造船、自動車、建設業(社会インフラ整備)が活発化しました。並行して廃棄物も多種類のものが排出されるようになり、従来の市町村のごみ処理体制では対応できない状況が生じました。
こうした背景を受け、昭和45年(1970年)の旧清掃法を大幅に改正した現廃棄物処理法が成立しました。この中で、事業系の廃棄物のうち、多量に排出されるもの、有害なものを中心に、市町村が処理できないものは、「産業廃棄物」として、企業にその処理を義務付けました。
一方、産業廃棄物以外の廃棄物は一般廃棄物として規定し、その処理については、従来通り一義的に市町村の管理責任とされています。
- 一般廃棄物と産業廃棄物の比較
5.専っぱら物とは
法第14条「産業廃棄物(略)の収集又は運搬を業として行おうとする者は(略)都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、(略)専ら再生利用の目的となる産業廃棄物のみの収集又は運搬を業として行う者(略)については、この限りでない。」
「 専ら再生利用・・・業として行う者」とは、次の通知に示す、古紙など4種類の廃棄物を扱う者を言います。
- 昭和46年10月25日環整第45号通知
「産業廃棄物の処理業者であっても、もっぱら再生利用の目的となる産業廃棄物、すなわち、古紙、くず鉄(古銅等を含む)、あきびん類、古繊維を専門に取り扱っている既存の回収業者等は許可の対象とならない・・・。」 - 法第20条の3、施行規則第8条の19第3号
「専ら再生利用の目的となる産業廃棄物のみの収集若しくは運搬又は処分を業として行う者に当該産業廃棄物のみの運搬又は処分を委託する場合、産業廃棄物管理票の交付を要しない。」通常、産業廃棄物の処理委託の際、管理票(マニフェスト)を廃棄物の引渡しと同時に交付しなければならないが、専ら物については、マニフェストの交付が不要である。ただし、委託基準や処理基準の適用除外はなく、書面による契約は必要である。また、処理委託契約書の法定記載事項には、「業務終了報告の方法」という項目があり、専ら物であっても処理が終了したことを報告する必要がある。
(まとめ)
- 専ら物とは①古紙、②くず鉄(古銅等を含む)、③あきびん類、④古繊維の4種類
- 専ら物のみを扱う者は、産業廃棄物収集運搬業の許可が不要
- 専ら物の処理を委託する場合、マニフェストの交付は不要
- ただし、書面による委託契約の締結が必要、また、処理の終了報告は必要。
6.排出事業者とは
法的な定義
廃棄物処理法において「排出事業者」は明確には定義されていません。しかしながら、法第3条第1項「事業者が事業活動に伴い生じた廃棄物は自らの責任において適切に処理しなければならない。」と規定されていますので、「排出事業者」とは、“事業活動に伴い廃棄物を排出した事業者”と定義されていることになります。
なお、法第12条第9項及び第10項において「9 その事業活動に伴い多量の産業廃棄物を生ずる事業場を設置している事業者(略)(次項において「多量排出事業者」という。)は、(略)当該事業場に係る産業廃棄物の減量その他その処理に関する計画を作成し、都道府県知事に提出しなければならない。」、「10多量排出事業者は、前項の計画の実施の状況について、環境省令で定めるところにより、都道府県知事に報告しなければならない。」と規定されていることからも、明らかです。
また、法第21条の3「土木建築に関する工事(略)以下「建設工事」という。)(略)当該建設工事に伴い生ずる廃棄物の処理について(略)当該建設工事(略)の注文者から直接建設工事を請け負つた建設業(略)を営む者(以下「元請業者」という。)を事業者とする。」と定められており、「建設工事に伴い生ずる廃棄物の処理については、当該元請業者を排出事業者とする」ことが明確となりました。
7.委託契約とマニフェスト
排出事業者がその廃棄物の処理を委託する場合、の重要な点は、「委託契約の締結」及び「マニフェストの交付」の2点です。これに違反すると重い罰則が適用されます。
委託契約
排出事業者がその廃棄物の処理を委託する場合、委託する収集運搬業者(処分業者)と委託契約を書面で締結しなければなりません。
- マニフェスト
排出事業者は、委託契約に基づき廃棄物を収集運搬業者(処分業者)へ引き渡す場合、同時にマニフェストを交付しなければなりません。
8.処理業者にとっての最も重要な法令順守事項
処理業者は排出事業者からの委託を受けて、廃棄物を処理します。従って、前項に示す排出事業者の遵守事項「委託契約」及び「マニフェスト交付」それぞれの相手方となりますので、排出事業者同様、共に遵守する必要があります。
一方、罰則の点から見ますと、委託契約の締結義務は、排出事業者のみに課されており、処理業者は罰則の適用対象とはなっていません。さらに、マニフェストの交付については、排出事業者には義務付けされており、違反すれば重い罰則の適用となり、同様に処理業者には、「マニフェストの交付を受けずに廃棄物の引き渡しを受けた場合、重い罰則が適用対象となっています。
このことから、処理業者にとって最も守らなければならないことは、「マニフェストの交付を受けて処理する」ことになります。
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